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【書寫山圓教寺】千年以上続く伝統行事は一般参加や見学が可能 歴史の重みや荘厳さを肌で体感して

静寂に包まれた深い山の奥にある「書寫山圓教寺」(えんぎょうじ)は天台宗の別格本山で、西国三十三観音霊場の第二十七番札所。自然に囲まれた聖域である祈りの山は、約1050年前、性空上人によって開かれました。大衆を思う上人の思いが今も生き続ける「圓教寺」では、開山当時から脈々と受け継がれてきた行事や、明治時代に一旦途絶え近年復活した行事があります。歴史ある伝統行事ですが、実は一般参加や見学が可能。実際に参加することで歴史の重みや荘厳さを感じることができます。合わせて、毎年にぎわう行事や毎月行われている行事、いつでも参加できる体験なども紹介。行事に合わせて「圓教寺」を訪れてみませんか?

INDEX

1.

■復活した4つの行事

1.三千仏礼拝行

三千仏礼拝行①

12月14~16日、午前9時30分~【大講堂】

明治以降「仏名会」として簡略化されていた行事を1995年に復活。大講堂で過去・現在・未来の仏さまの名前を唱えながら1日1000回、3日間連続で3000回の五体投地を行います。五体投地とは合掌して起立した姿勢から床にひざまずき、両手は手のひらを上に向け、前に差し出すような形で両肘と額を床に付けて深く礼拝する最も丁寧な礼拝。立ったり、座ったりを繰り返すため、膝への負担が大きく、肉体的にもかなり厳しい行です。

 三千仏礼拝行②

自分自身の罪を懺悔(さんげ)し、仏さまからのご加護やご利益を祈願するもので、一般参加が可能。僧と一緒に勤められる法要で、都合のいい時間だけの参加や座ったまま礼拝することもでき、自分のペースで参加できます。礼拝すること、声に出すことで知らず知らずのうちに積もった一年間の心の垢を落とし、清々しい気持ちで新年を迎えられそうですね。

 

2.法華経不断読誦会(ふだんどくじゅえ)

法華経不断読誦会①

3月6日の正午~9日の正午【開山堂(奥之院)】

明治以降途絶えていた行事を1997年に復活。圓教寺を開いた性空上人の命日直前の3日間、開山堂(奥之院)で行われます。3月6日の正午から9日の正午までの72時間、灯明に照らされた性空上人像の前で、不眠不休で法華経の経文を声に出して読み続けます。

法華経不断読誦会②

現在、最初と最後は一山の衆徒全員で行い、それ以外は2~3人の僧が交代しながら昼夜途絶えることなく続く法要。

 

一般の参加も可能で、外陣から手を合わせながら、法華経に耳を傾けるだけでも心が落ち着き、穏やかな気持ちになります。

 

3.胎蔵界曼荼羅供(まんだらく)

胎蔵界曼荼羅供

3月10日、午後1時~【開山堂(奥之院)】

明治以降途絶えていた行事を1997年に復活。法華経不断読誦会の結願と性空上人の命日に開山堂(奥之院)で行われます。僧たちが経文や真言に旋律抑揚をつけて唱える天台声明が、天から美しい花々を降らすかのように堂内に響き渡る荘厳な行事。外陣から耳を傾ければ、漏れてくる澄んだ声明の清らかな音色に聞き入ってしまうかも。

 

また、この日は普段非公開の性空上人像を特別公開。法要時間(午後1~3時)を除いては内陣に入ることができるので、間近で手を合わせて。

 

4.勧学会(かんがくえ) 法華八講

法華八講

5月28日、午前9時30分~【奥之院 護法堂拝殿】

2007年に復活。法華経全八巻を八座に分けて内容を講義する行事で、経題を唱える読師(どくし)と経文の意味を説明する講師(こうじ)が向かい合って台の上に登ります。その後、脇に座る問者(もんじゃ)が経文の意味を質問すると、講師が独特の節で講義を行います。

開山堂前の護法堂拝殿で行われ、堂外からの見学が可能。

2.

■にぎわう行事

1.修正会(鬼追い会式)

鬼追い①

 1月18日、午後1時~【摩尼殿、白山権現】

性空上人が入滅した寛弘4(1007)年に始まり、現在まで千年以上も続く歴史ある行事の一つ。摩尼殿では毘沙門天の化身とされる若天(わかてん)が鈴と松明(たいまつ)、不動明王の化身とされる乙天(おとてん)が宝剣を持ち、四股を踏むような独特の動きで大地を鎮め、五穀豊穣を祈ります。

 鬼追い②

摩尼殿外陣では「鬼の餅」と呼ばれる巨大な餅と桜の造花「鬼の花」が飾られます。これは夢前川の氾濫に苦しんでいた英賀西村(広畑区才)が性空上人に救済され、村人たちの願いによって始められたのが起源と言われているとか。

 

また、鬼追いの準備、設営、進行を行うのは、若天の子孫である梅津家。性空上人と共にこの地に来て、今も書寫山の麓に住み続けています。鬼追いの起源や由来を知ると、さらに深く楽しめそう。

 

 

2.節分会

節分会

2月3日、午後1時~【摩尼殿】

立春は季節の変わり目であると共に一年の節目と考えられ、厄(鬼)を追い払う行事を行います。圓教寺の節分会が始まったのは、大正3(1924)年。1月18日に行われる「修正会(鬼追い)」の延長であるとされています。当日、摩尼殿内陣で僧による祈願が行われた後、年男や僧たちによって豆まきが行われます。豆をまく行為は「マメ」が「魔滅」に通じる意味もあるとか。

 節分会②

豆は袋詰めしたものをまきます。袋の中には金の観音像一体、銀の観音像二体、大鏡餅の各引き換え券や多数の宝金が入っているそう。たくさんの豆の中から金や銀の観音像をゲットできたら、最高の一年になりますね。

 

3.書写山新緑まつり

書写山新緑まつり

5月上旬

木々が一斉に芽吹き、まぶしいほどの新緑に覆われる5月。境内では国指定重要文化財の大講堂内部と釈迦三尊像、常行堂内部と阿弥陀如来坐像を特別公開。合わせて本多家廟所や開山堂内部と鎌倉時代の性空上人坐像(国指定重要文化財)も公開されます。

 

 

4.書写山もみじまつり

書写山もみじまつり

11月中旬

紅葉シーズンになると、木々に囲まれた書寫山一帯は赤や黄に彩られます。境内では大講堂内部と釈迦三尊像(いずれも国指定重要文化財)、常行堂内部と阿弥陀如来坐像(いずれも国指定重要文化財)、金剛堂内部(国指定重要文化財)と天井絵を特別公開。また、夜は摩尼殿がライトアップされるので、昼間とは違った優雅で、華やかな姿に酔いしれて。

3.

■毎月行われている行事

1.護摩供

護摩供

毎月28日、午後1時~【摩尼殿・護摩堂】

摩尼殿の護摩堂で毎月行っている護摩供に参加しませんか? 護摩とは護摩壇中央にある炉の中に供物や願い事を書いた護摩木を入れ、煩悩を焼き尽くす密教の修法。当日参拝し、開運厄除・開運招福・家内安全・商売繁盛など、願い事を書いて渡せば、祈願してもらえます。燃え上がる炎を見ると、厳かでありがたく、スッキリした気持ちになります。

 

2.無料坐禅会

無料坐禅会

毎月第3土曜、午前11時~【常行堂】

自分を見つめる時間が欲しい人におすすめしたいのが坐禅。圓教寺では常行堂で毎月1回、無料の坐禅会を行っています。背筋を伸ばし、薄暗い堂内で阿弥陀如来像と向き合って坐禅。慌ただしい日常の中で、本来の自分と向き合う貴重な時間を作ってみては。事前申し込みは不要。

4.

■2カ月に一度行われている行事

1.大般若転読会

大般若転読会①

奇数月の16日、午前10時~【大講堂】

全600巻ある大般若経の経典を複数の僧たちが高く持ち上げ、パラパラっとめくりながら転読する法要。経典の転読によって起こる風が災いを転じて福をもたらし、災厄を取り除いて良縁を与えてくれます。

 大般若転読会②

当日、大講堂へ行けば一般の方も外陣からの参加が可能。終了後、僧からお加持を受けることができます。

 

2.宇賀辯財天浴酒供(うがべんざいてんよくしゅく)

宇賀辯財天浴酒供

60日に一度の己巳(つちのとみ)の日、午後2時~【摩尼殿】

摩尼殿の本尊・如意輪観世音菩薩の化身である宇賀辯財天は知恵と学問、財宝福徳の神。60日に一度巡ってくる己巳の日、摩尼殿に安置された辯財天の頭頂部に鎮座する宇賀神に香などを混ぜ、人肌に温めた清酒を灌(そそ)ぐ「浴酒」を行います。この作法で辯天さまの功徳力が強大になるそう。

 

秘法のため、薄い幕を張り直接外からは見えないように修法しますが、一般の参拝も可能。財福開運はもちろん、家内安全や商売繁盛、技芸上達など現世利益の願いがある人は、日時を合わせて参拝を。

 

2023年前半の開催は3月12日(日)、5月11日(木)、7月10日(月)、9月8日(金)。

 

5.

■いつでもできる体験

写経

写経

拝観時間内であればいつでも【食堂】

拝観時間内であれば、いつでも体験が可能。気軽に楽しみたい人には観音経の一部が薄く印刷された「花びら写経」がおすすめです。書かれている経文は色によって違うので、願い事に合った花びらを選んで。

また、時間のある人はお経の中で最も短い「般若心経」の写経を。せっかくなので本尊である如意輪観音に奉納してみては。

 

 

6.

■圓教寺の塔頭で味わう料理

壽量院の精進料理

壽量院の精進料理

4月~11月(5人以上、要予約)【壽量院】

圓教寺の塔頭である「壽量院」では、精進本膳料理を幻の書寫塗りの器で味わうことができます。料理は「圓教寺行事記」の中の献立を基本に、現代風にアレンジしたもの。せっかく圓教寺を訪れるなら、事前に予約を入れて、国の文化財にも指定されている趣ある空間で、ゆったり料理を味わいませんか。

 

朝から夕方まで1日、ゆっくり過ごすことのできる「圓教寺」。行事に参加したり、写経や坐禅を体験したり、自然の中で過ごす時間は緊張した心を解きほぐし、癒やしてくれますよ、きっと。

7.

■圓教寺データ

【所在地】 兵庫県姫路市書写2968

【志納金】一般(中学生以上)500円、小学生300円、未就学児無料

【特別志納金(志納所前~摩尼殿下までのバス乗車含む)】大人(中学生以上)1,000円、小学生500円、未就学児無料

【入山時間】8:30~18:00 ※季節によって変更あり ※ロープウェイ運行時間にあわせて変動あり

【定休日】年中無休

【アクセス】公共交通機関利用の場合 JR・山陽電鉄「姫路駅」から神姫バス「書写ロープウェイ行」で終点下車(約30分)

車の場合 山陽自動車道「山陽姫路西インター」から東に5.5キロメートル、姫路バイパス「中地ランプ」屋か北西に7.5㎞、中国縦貫道「夢前スマートインター」から南に11㎞

【駐車場】観光用無料駐車場あり

【問い合わせ】 079-266-3327

【HP】 http://www.shosha.or.jp

※2023年2月27日(月)~3月31日(金)の期間、定期点検のためロープウェイは運休。ロープウェイ山麓駅待合所で出開帳あり(9:00~16:30)

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