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2020/06号

どんなドラマが待つのか、工場地帯を貫く運河に似た川

(姫路市広畑区・大津区)




 姫路市南東部の海岸線に位置する姫路市広畑区。その中心をなすのが、北は京見山、東は夢前川、南は播磨灘、西は汐入川に区画された「広畑」、かつての「飾磨郡広村」で、昭和14年に操業を開始した日本製鉄広畑製鉄所(現日本製鉄瀬戸内製鉄所広畑地区)があることで知られている。

 昭和12年に広畑製鉄所の建設が決定すると、工場予定地に流れ込んでいた夢前川が付け替えられたが、併せて汐入川の河川改修も行われ、幕末の頃は川沿いに一橋藩の米蔵があり、御用米を運ぶ舟が往来していた川も、現在のような工場地帯を貫く、ほぼ一直線の川に変わったという。

 山電天満駅から南に下り、国道250号を越え、姫路市の広畑区と大津区の境をなす川沿いの道を進んでいく。川と言っても河川敷があるわけでも、雑木や草が茂る中州があるわけでもなく、人工的に開削されたコンクリート造りの運河のようで、東岸には製鉄所の広大な敷地が続き、緑地帯として巡らされた常緑樹の木立が水面に影を落としている。

 この木立の部分だけ切り取れば、ヨーロッパのどこか田舎町の運河に見えなくもないが、背後に覗くのが工場の建屋であったり、白い煙を吐き続ける煙突であったり、高圧の送電線と鉄塔であったりするので、やはり工場地帯の中に出現した運河、という捉え方の方が面白いかもしれない。

 さらに下ると、どこか雰囲気のある排水機場の建物が見えてくる。排水機場というのは大雨などによる洪水防止のために水を排水する装置のことで、一見コンクリートが剥き出しになった無機質な建物が多いのに、こちらはどこかメルヘンチックな形をした水門(堰)や、外壁がガラス張りになった建屋が組み合わさっており、なかなかユニークかつ印象的。サスペンス物や犯人を追い詰める刑事ドラマなどにも使えそうだ。

 そこからしばらく進むと、廃線跡の鉄橋のような構造物に出くわす。今はない国鉄飾磨港線経由で海岸線の工場に物資を運んだり、製品を送り出したりした引き込み線の名残で、鉄橋は東側の日本製鉄広畑製鉄所と西側の虹技という鋳物の製造会社を結んだもの。「汐入鉄橋」の文字が見え、虹技の工場敷地に向かってレールの跡も残っている。「鉄ちゃん」には嬉しいポイントといえるが、さらに下っていくと羽目板を巡らせた古い木造の建屋も見え、タイムスリップしたような感覚が味わえる。

 さらに行くと、道はアスファルトから一直線に延びる砂利道に変わり、左が運河に似た川、右が鉱石などの野積場で、どこまでも荒涼とした雰囲気。砂塵が舞う殺伐とした景色の中、果たしてどんなドラマが待っているのだろう……。

〜 Presented by 姫路フィルムコミッション 〜

姫路は名作の宝庫!姫路で撮影された映画・ドラマをお家で見よう♪



 いつも撮影でお世話になっている市民の皆さま、エキストラ登録されている皆さま、またメルマガをご登録下さっている皆さま、いつも姫路へお越し下さっていた皆さま、いかがお過ごしのことでしょうか。
 また、この度、新型コロナウイルスの影響拡大により、被害にあわれた皆様もいらっしゃるかと存じます。心よりお見舞い申し上げます。
 まだまだ、油断ができない状況ではありますので、皆さまにおかれましても、何卒ご自愛ください。
 また、少しでもご自宅でお過ごしになる時間が豊かなものになり、姫路の魅力の再発見に繋がるような情報をお伝えしたいと考え、前回に引き続き、姫路の支援作品を撮影支援担当者の視点から年表と記事でご紹介させて頂きます。
 今回は、黒澤明監督の『影武者』と『乱』にクローズアップしました。(一部物語の内容も含みますので、ご覧になる際はご注意ください。)
 支援作品年表は、姫路フィルムコミッションのHP上でもご確認頂けますので、是非ご覧ください。

※作品につきましては、ネット動画配信サービスでご覧になることを推奨いたします。


映画『影武者』と『乱』
――世界のクロサワと、絶対ロケ地・姫路城――

海外から来られた撮影クルーの皆さまや観光客の方々をご案内する際に、黒澤作品が撮影されたことをお伝えすると、必ずといって良い程リアクションが返って来る有名な作品『影武者』と『乱』。
世界中から憧れられ、参考にされた作品に登場する姫路城は、改めてこの作品を見れば、世界に誇るロケ地だと確信します。


映画『影武者』1980年公開作品・東宝
監督:黒澤明 キャスト:仲代達矢/山崎努/萩原健一/根津甚八/大滝秀治

<ストーリー紹介>
 時は戦国時代。甲斐の武田信玄(仲代達矢)が「我もし死すとも3年は喪を秘せ」と遺言を残し死去した。織田信長や徳川家康の目を欺き、「信玄死す」との噂を打ち消すため、信玄と瓜二つの盗人を影武者に仕立てる。

<見どころ>
 180分の超大作で、カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた作品『影武者』。
物語の冒頭、一人の兵士が城内の石段を素早く駆け抜けるロングシーンが登場し、作品の世界に一気に引き込まれます。道を埋め尽くす兵士たちの数とロケーションスケールにあわせたリアルな武具や旗の数に圧倒されます。
 昨今の作品でいうと『関ヶ原』や『引っ越し大名!』で登場した「ロの渡櫓」では、軍議のシーンが再現され、様々なシーンで戦国時代の臨場感を味わえます。また、躊躇なく馬が素早く門を駆け抜けるシーンなど、高度な馬術、撮影技術、全てのスタッフ、キャストのプロフェッショナルが集結したからこそできる、ギリギリの演出に挑んでいます。
 武田信玄が死んだという噂が流れ、信長や家康や謙信たちが、それぞれ感情を表現するシーンでは、まるで信長の性分を表したかのように、馬に乗って姫路城の本丸(備前丸)を勢いよく何度も駆け回るシーンを撮影。天守との構図が見事にマッチングした面白いシーンです。姫路城は、劇中で武田側と織田側の両方のシーンで登場します。
 劇中で描かれる信玄の影武者たちの数奇な運命と、戦場シーンのスケール感は圧巻で、ロケーションも「姫路城」以外に「伊賀上野城」や「熊本城」など、貴重な文化財を用いたことでリアリティある活劇となり、作品に深みを与え、芸術的な画力から感動と活力を与えてもらえる名作です。



映画『乱』1985年公開作品・東宝/日本ヘラルド
監督:黒澤明 キャスト:仲代達矢/寺尾聰/根津甚八/隆大介/原田美枝子

<ストーリー紹介>
 シェイクスピアの『リア王』を元に、毛利元成の3人の子に着目し、戦国時代に置き換え描かれた作品。過酷な戦国時代を生き抜いてきた猛将、一文字秀虎(仲代達矢)は、70歳を迎え、家督を3人の息子に譲る。長男太郎(寺尾聰)は家督と一の城を、次郎(根津甚八)は二の城を、三郎(隆大介)は三の城を譲り、互いに協力し合うように命じた。しかし、父・秀虎を待っていたのは息子たちの反逆と骨肉の争いだった。

<見どころ>
 こちらも、阿蘇山など壮大なロケーションを使い、エキストラの数や華やかな衣装に迫力ある演出の超大作。
 4億円かけて作ったといわれるお城に火をかけ、燃えている城から父・秀虎(仲代達矢)が出てくるシーンは、ワンカットで撮影されており、危険を顧みず試みた仲代さんと黒澤監督・スタッフたちで生み出した圧巻の演出が心に焼き付いて残る有名作品です。
 また、「姫路城」でも数々のシーンが撮影されました。ピーターさん演じる狂阿弥が、長男・太郎の家来たちと揉めるシーンで使われた搦手は、ロケハンに来られた制作者に説明すると伝わる有名なシーン。
 また、父・秀虎が「乾小天守」から鋭い形相で長男の家来を弓矢で狙う姿は、華頭窓がアクセントになりインパクトがある一枚の名画のような構図。
 「はの門」から「にの門」に続く坂では、楓の方(原田美枝子)が城に向かっていた秀虎側の女性たちを退かして家督の交代を態度で示すシーンを撮影。天守から臨めるつづら折りになった道のストロークを活かして秀虎目線で撮影されており、姫路城本来の構造をそのままロケーション撮影にうまく活かしたシーンが楽しめます。
 また、秀虎と狂阿弥との掛け合いのシーンでは、あまりどの作品に出ていない「東小天守」が登場するのも貴重です。甲冑を飾っているのが目印です。普段は見られない非公開エリアなので、是非お見逃しなく。
 エンドロールを見ていると、最新作の『引っ越し大名!』でロケーションをコーディネートしてくださった担当者が、この『乱』も担当していることを知り、改めて様々な監督や制作部に愛され続け、大変な環境下でも撮影したいという撮影隊の熱意に改めて敬意を表したいです。
 どちらも、3時間近くの超大作!まだご覧になられていない方は、ぜひご覧になってみてください。

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