メールマガジン

2019/05号

映画「引っ越し大名」・松平直矩ゆかりの地(2)　男山八幡神社

（姫路市山野井町）他

　星野源、高橋一生、高畑充希ら豪華メンバーが出演する８月公開の映画「引っ越し大名！」。幕府によって生涯7度もの引っ越し（国替え）を余儀なくされた実在の元姫路藩主・松平直矩をモデルにした土橋章宏さんの小説『引っ越し大名三千里』を映画化したものだが、直矩は前回紹介した播磨国総社射楯兵主神社のほかにも旧姫路藩内に幾つかの「ゆかりの地」を残している。

　その一つが、姫路城の天守群がそびえる姫山の西、男山の中腹に鎮座する男山八幡神社で、その参道入口に立つ石鳥居は、延宝７年（１６７９）に神社の社殿を改修した直矩が寄進したものである。

　このほか神社の社殿の前には正徳６年（１７１６）に時の藩主・榊原政邦が寄進した石鳥居があり、参道脇には元和９年（１６２３）に千姫が夫の本多忠刻の病気平癒を願って建立したと伝わる千姫天満宮もある。また、男山の山頂は配水池公園になっており、そこからは姫路城の天守群だけでなく西の丸までが一望できる。姫路城十景の１つに選ばれているビューポイントで、ぜひ映像に取り込みたいところ。さらには山麓から山頂まで、運動部の選手などに走らせれば絵になる急勾配の石段が続いており、ロケ地として多彩な魅力を醸し出している。

　男山の北、八代宮前町にある大歳神社にも延宝８年（１６８０）に直矩が寄進した石鳥居が残っている。かなり風化してしまっているが、鳥居には「姫路城主従四位下侍従兼大和守源朝臣直矩」と刻まれている。直矩の曽祖父・徳川家康も自らの出自を源氏として源家康と自称しており、直矩も源姓を名乗っていたようだ。神社そのものも開けた住宅街にあるにも関わらず、しっとりと落ち着いた佇まいで緑も豊か。都市の中に残された風情と趣のある神社として描けそうだ。

　最後が姫路城からはかなり離れるが、ＪＲ英賀保駅に近い飾磨区の山崎山にある西山廟所。延宝９年（１６８１）に市内の亀山にある亀山本徳寺が直矩の許しを得て同寺の歴代廟所として開設したものとされる。ここでは詳しく触れないが、亀山本徳寺は播州における浄土真宗の一大拠点だった英賀御堂（英賀本徳寺）がルーツで、羽柴秀吉との戦いで英賀城が落城した後、秀吉によって亀山の地に移され、浄土真宗本願寺派の中本寺として発展した名刹である。大河ドラマ「新選組！」や映画「関ヶ原」などのロケ地にもなったことでも知られるが、その歴代住持や門信徒の墓所が西山廟所で、長い歴史を感じさせ、白壁の塀に囲まれた歴代墳墓や鐘楼のある廟堂などは寺院として描くことができるだろう。