【姫路城】圧巻の大天守を間近で!非公開エリアを見学できる「夏の姫路城特別公開」を開催
2023年、姫路城は世界文化遺産登録30周年を迎えます。
安土桃山時代から江戸時代初期にかけての建築技術はすばらしく、そのほとんどが国宝や重要文化財。
普段、非公開の場所も多いのですが2022年7月15日(金)~8月31日(水)、「プレ兵庫デスティネーションキャンペーン」の開催を記念し、乾小天守、イの渡櫓、ロの渡櫓、ハの渡櫓、東小天守の5カ所を特別公開します。
この機会に普段見ることができない角度からの大天守、破風(はふ)や懸魚(げぎょ)などの建築技術、さまざまな工夫などを間近で見学しませんか?
今回は見どころ4カ所を、姫路市城郭研究室の学芸員・工藤茂博さんに案内してもらいました。
INDEX
- 1.
【乾小天守】
〈乾小天守〉
大天守の北西に位置する乾小天守。
北西を意味する「乾」という言葉から、建築当初は「乾櫓(いぬいやぐら)」と呼ばれていました。
外観は三重に見えますが、内部は地上4階、地下1階の造りになっています。
- 2.
【乾小天守】最上階の内部
〈最上階の内部〉
特別公開エリアの中でも、時間をかけて見学したい場所の一つ。
四方には窓があるので明るく、格子(こうし)がはめられていないため、360度の景色を眺めることができます。
このことから乾小天守は、城主など身分の高い人が姫路城の周囲を一望できるように造られたのではないかと考えることができます。
これは、羽柴(豊臣)秀吉が築城した天守ではないかという説の理由の一つになっていました。
〈長押の釘隠し〉
注目したいのは、長押(なげし)にむき出しに刺さっている和釘。
本来の機能として、見張りや武具などを納める倉庫を想定していたので、釘隠しでわざわざ装飾をしなかったのでしょう。
秀吉時代の天守説と倉庫説、詳しくは分かりませんが、想像を巡らすだけでも楽しいですね。
姫路城内各所の長押には、和釘の頭を隠すため、六枚の葉の形をした「六葉(ろくよう)釘隠し」が設置されています。
千姫が暮らしていたとされる西の丸の化粧櫓では、家紋入りの釘隠しも。
城主が登ることが想定される大天守最上階には金色の釘隠しもあるので、釘隠しの違いに注目しながら、建物内部を巡るのも面白いかもしれません。
- 3.
【乾小天守】最上階-北の窓-
〈最上階 北の窓からの景色〉
北の窓からは、シロトピア公園や住宅地などを眺めることができます。遠くに連なる山並みの中でも、正面に見えるのは広嶺山。
資料は残っていませんが、この位置関係から推測すると、姫路城を築城する際は、広嶺山と姫山を結んだ線を都市計画の基準線とする城下町が姫山の南にも造られました。
同じころ、豊前国(大分県)中津城主となった細川忠興は、地図を製作するため目印になる山に登って磁針を振らせた記録があります。
姫路城の築城でも、測量のために同じようなことが行われたのではないでしょうか。そんなことを思うと、眺める景色も違って見えます。
- 4.
【乾小天守】最上階-東の窓-
〈最上階 東の窓からの景色①〉
東の窓からの見どころは、中庭を囲むように、大天守と3つの小天守、それぞれをつなぐ4つの渡櫓から構成された連立式天守群を眺められること。
平成の修理で塗り直された漆喰(しっくい)や屋根瓦などもすぐそばで見ることができます。
中庭は大天守の北にあたり、日当たりが悪く、雨が降ると乾きにくい場所。
大天守に降った雨が一気に流れ落ちる場所があり、その部分は瓦や木材が傷みやすいので、1・2階の屋根の一部に銅板を敷いています。
こうして修理したり、補強したりしながら、姫路城を支えている裏側を見学できるのも、特別公開ならではですね。
〈最上階 東の窓からの景色②〉
圧巻の大天守をカメラに収めるのもお忘れなく!大天守を彩る大きな入母屋破風(はふ)が目に入ります。
西大千鳥破風とも言います。
火災除けの役目のある懸魚(げぎょ)、等間隔に並んだ格子、鯱(しゃち)など、普段遠くて見えない部分にも注目すれば、姫路城の美しさの秘密を知ることができるかも。
西大千鳥破風の下に並んだ4つの格子窓の左側をよく見ると、出入りできる扉が見えます。
この扉はメンテナンス用の扉で、江戸時代からあったもの。当時から、屋根瓦などの修理を前提に扉を作っていたと思うと、職人魂を感じます。
- 5.
【乾小天守】最上階-南の窓-
〈最上階 南の窓からの景色〉
内側から全体は見えませんが、南と西の窓には、黒漆(うるし)塗り、金箔(きんぱく)金具で飾られた華頭窓(かとうまど)が取り付けられています。
姫路城正面から見える部分にしかないので、城をより豪華に見せるための演出だったのではないでしょうか。
華頭窓は本来、禅宗寺院の仏殿など、寺院建築に用いられた高貴な建築物の象徴。
当時は、中国文化を取り入れた新進気鋭の城郭建築だったそう。
当時の人たちも、華やかな窓をうっとり眺めていたかもしれませんね。
- 6.
【ロの渡櫓】
〈ロの渡櫓 2階〉
1・2階とも東西約28.8m、南北約5.9m、面積約170㎡。現存する渡櫓で最大級の規模を誇ります。
最近では2021年公開の映画「燃えよ剣」、2019年公開の映画「引っ越し大名」などの撮影が行われた場所として有名です。
〈ロの渡櫓 2階の床〉
注目したいのは、築城当時のまま今も残っている2階の床。よく見ると木の表面に凹凸があるのが分かります。
これは槍鉋(やりがんな)や手斧(ちょうな)で削った跡。修理で交換した新しい床板は、鉋(かんな)で削っているので表面が滑らかです。
足の裏で木の質感を感じながら歩くと面白いかもしれませんね。
〈ロの渡櫓 2階の武具掛け〉
渡櫓の壁には、鉄砲や槍(やり)などの武具を並べる武具掛けが残っています。
柱の上に等間隔で並んでいるのは、竹でつくられた棒。火縄とか火薬袋などを掛けていたのではないかと考えられています。
高い位置にあるので、梯子(はしご)のようなものを使っていたのでしょうか。L字型に曲がった鉄製のものもあります。
- 7.
【東小天守、イの渡櫓】東小天守-最上階-
〈東小天守 最上階〉
東小天守は、北に入母屋破風を設けた二重の渡櫓の上に、東西に入母屋破風 を設けた望楼(ぼうろう)が乗った三重の櫓です。
装飾的な華頭窓もなく、3階部分を付け足したような簡素な造りが特徴。
内部には破風の内側に当たる明かり取り用の窓のほか、防御を固めるため、鉄砲を撃つ狭間(さま)もあります。
映画「燃えよ剣」では、沖田総司が病気で寝ている部屋として登場しています。
〈東小天守 最上階の高窓〉
高い位置にあるのは、鉄砲を撃った後の煙を逃がすための高窓。
江戸時代はまだ、煙が出る火薬を使っていたので、煙が充満したら、梯子(はしご)などを使って、窓を開けて排煙したと考えられます。
- 8.
【東小天守、イの渡櫓】イの渡櫓
〈イの渡櫓からの景色〉
イの渡櫓の窓から中庭を見ると、目の前の屋根には、大天守から流れる雨水による傷みを防ぐための銅板が敷かれています。
また、中庭に立つ2本の棒は、避雷針。
姫路城に雷が落ちたという記録では、大天守二重目と備前門に雷が落ちて柱などが損傷し、修理工事を行ったという記録が残っています。
- 9.
姫路城夏の特別公開詳細
ここで紹介した場所以外にも、夏の特別公開期間中は、普段公開していない場所をじっくり見学することができます。
時刻によってもさまざまな表情を見せる姫路城。期間中、何度でも訪れて、新たな発見や謎、お気に入りの景色を探してみては。
〈開催期間〉
2022年7月15日(金)~8月31日(水)
9:00~17:00 ※7/23(土)~8/28(日)は9:00~18:00(最終開城17:00)
〈公開場所〉
姫路城 乾小天守、イ・ロ・ハの渡櫓、東小天守 ※いずれも国宝
〈料金〉
入場料(大人1000円 / 小・中・高生300円)に加え観覧料500円(大人)/200円(小人)
〈アクセス〉
姫路駅北口から神姫バス乗車「大手門前」下車徒歩5分 JR姫路駅、山陽姫路駅から徒歩20分
※駐車場については下記のURLからご覧ください。
〈お問い合わせ先〉
姫路城管理事務所 079-285-1146
↓姫路城公式HP↓
姫路城公式サイト:トップページ (himeji.lg.jp)
↓「ひめのみち」HP 姫路城特別公開ページ↓
世界文化遺産・国宝 姫路城 特別公開 | イベント | ひめのみち (himeji-kanko.jp)
【取材協力】
姫路市立城郭研究室 学芸員 工藤茂博さん
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